小さくて けれど難しい世界『one night, hot springs』を知ろう。

様々なメディアで「LGBT」という言葉を耳にする機会が増えた。しかし彼・彼女らが抱えている悩みとは、どんなものなのだろうか。その1つの答えを示してくれるのが、このゲームだ。今回は『one night, hot springs』を紹介しよう。

主人公「ハル」に訪れる事件

このゲームは、主人公が過ごす「とある一日」を描いている。その一日というのは「友人と温泉旅行へ行くこと」なのだが、主人公「ハル」にとっては大きな壁となって立ちはだかる。なぜか? 「ハル」は、体は男性でも心が女性という「トランスジェンダー」なのだ。立ちはだかる問題――例えば、帳簿に名前を書く時の性別は? 部屋で着替える時はどうするのか? 女湯に入るのか、男湯に入るのか? ――と、様々な葛藤に「ハル」はぶつかる。

果たして「ハル」は温泉旅行を楽しめるのか!?

『one night, hot springs』は無料ゲームだ。ゲームシステムとしては選択式のノベルゲームで、回答を選択することでゲームが進んでいく。一部の回答を選択すると、左上に表示されているハートゲージが減り、ゲージがすべて減ってしまうとBAD ENDルートへ突入する。クリア時間は10分とかからず、ルートは全部で7つなのでエンディングをコンプリートするのにも然して時間はかからない。そして選択肢を間違えなければ、やさしい世界が「ハル」ちゃんを待っている。友人たちと、温泉旅行を楽しめるというわけだ。

シスジェンダーにこそ理解してほしい世界観

ゲーム全体を通して感じるのは「当たり前のことができない疎外感」だ。シスジェンダーの「当たり前」が、「トランスジェンダー」にはつらい。(性自認に差がある人々を「トランスジェンダー」と呼ぶのに対して、性自認に差がない人々を「シスジェンダー」と呼ぶ。)「当たり前」の差を埋められない社会における「疎外感」を『one night, hot springs』は比較的やさしいタッチで描いている。このゲームを通じて、我々は「トランスジェンダー」の人々の日常にある「選択」の一部を知ることができる。

LGBTなどの性的志向・性自認が取り上げられるようになって久しい。『one night, hot springs』は「トランスジェンダー」の人々が抱える、様々な悩みに関する入門書だ。また、このようなセンシティブなテーマを取り上げたゲームをプレイできることこそ、インディーズならびにSteamの良さとも言える。様々な世界観、様々な認識、様々なカテゴリーが叫ばれる昨今、ゲームで自分の価値観を見直してみるのもいいのではないだろうか。

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one night, hot springs

タイトル: one night, hot springs
ジャンル: 無料プレイ, インディー, シミュレーション
開発元: npckc
パブリッシャー: npckc
シリーズ: npckc
リリース: 2018年8月31日