腹筋崩壊! コメディ・リズムゲーム『Trombone Champ』

「なぜ正確な音が出せるかよく分からない」楽器の代表として挙げられるのは、トロンボーンじゃあないだろうか。そうそう、だいたいステージ向かって右側で みょいーん と伸びている金ピカのアレだ。筆者は一度吹いたことがあるが、筆舌に尽くしがたい惨状に終わった。なんと2022年9月、この闇の楽器に手を出したリズムゲームが登場した。その名も『Trombone Champ』。

さて、このゲーム。「正確な音を出すのが、結構むずかしい」。だが、下手であればあるほどゲラゲラ笑える。ひとつ間違えると、シックスパックができてしまうくらいに笑える。下手でも上手でも面白い音ゲーなんて、今まで存在しただろうか? 気圧の乱高下でダウナーな気持ちになってしまう昨今でも、元気が出てしまうリズムゲーム『Trombone Champ』について、かく語ろうと思う。 

利き手が 攣るんよ

『Trombone Champ』はカジュアルにトロンボーン演奏を体験できるリズムゲームだ。やり方は簡単。画面に表示される楽譜ないし右側から流れてくるノーツに合わせて、タイミングよく左クリックor任意のキーを入力するだけ。音の上げ下げは、マウスで操作する。ただそれだけのシンプルなものだ。なーんだ、それだけかよと思ったキミ。「ウィリアム・テル序曲」で泣きたまえ。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」でも構わんよ。たしかに……操作はシンプルなのだが……難しいッ!!!! スライドを使った音程微調整とマウスピースでのタンギングでリズムを合わせる一連のイライラ、かっこいいグリッサンドの難しさを「ここまでするかぁ!?」というほどに再現してくれている。なぜ音ゲーで微分音に悩まされなければならんのだろうか。 かつてトローンボーン担当だった人は、青春の日々のチューニングを思い出し、涙にくれることだろう。それでも画面右ですっごい楽しそうにトロンボーン吹いてるキャラクターがいるから、こっちも楽しくなるんだけども。

判定は「PERFECTOS(パーフェクト)」「NICES(いいね)」「OKAYS(悪くない)」「MEHS(うーん……)」「NASTIES(※「ヤバイ」とかそういうニュアンス)」の5種類。判定の基準だが、音程の正確さの他にも、ノーツを「押す」「離す」タイミングに判定が入る。音程を正確に合わせるのは至難の業なので、まずはリズムを正確に刻めるように頑張ってみよう。ここで注意してほしいのが、トロンボーン演奏者には肺活量の限界がある。ボタンを押しっぱなしにした状態を続けると息切れを起こし、しばらく演奏ができなくなってしまう。譜面とにらめっこしながら、ブレスのタイミングを見極めていこう。

コンボをつなげると、画面左上に表示されている「CHAMP」メーターがアップし、光り始める。それは最終的なスコアに反映されるので、積極的に狙っていきたいところだ。それにしたって無理ゲーにもほどがある? よろしい。なら、おすすめの設定を教えておくね。初期設定では、マウス操作の上下が反転している。これは拙い(得意な人はそれでいいと思うけど、直観的に動かせるほうが断然いい)。まずは設定(SETTING)で設定を変えよう。マウスの上下反転は、「DEFAULT(INVERTED)」を「NOT INVERTED」に変更すれば解除できる。あとのマウス感度やノーツスピードはお好みで。などなど色々調整はできるけど。まぁ、最初は羊みたいに「MEH」「MEH」泣くことになるだろうけどね!

「God Save the “KING”」の時代になったんだねぇ

現在プレイできる曲の数は、オリジナル楽曲 5曲、イギリスのマルチ インストゥルメンタル ミュージシャンMax Tundra(Ben Jacobs氏)提供の楽曲が1曲、そしてパブリック・ドメインである曲を編曲した楽曲 19曲を含めた合計25曲が演奏可能だ。英語で書いてあるのでピンとこない人もいるかも知れないが、映画「2001年宇宙の旅」のメイン・タイトルに使われた「Also sprach Zarathustra(ツァラトゥストラはかく語りき)」や、聞いたことはあるだろう「Beethoven’s Fifth Symphony”(交響曲第5番『運命』)」、一般的に英国国歌として知られる「God Save the King(国王陛下万歳)」、くるみ割り人形の「Dance of the Sugar Plum Fairy(金平糖の精の踊り)」など、どこかしらで聞いたことのある曲が収録されている。知っている曲はタイミングが掴みやすいので、そこから練習していこう。個人的なおすすめは、もちろん「ツァラトゥストラはかく語りき」だ。何といっても演奏しやすい。 音程を間違えた時の「やっちまったなー」感も凄割と笑える上に、主旋律とリズム隊の譜面をさらえるので、基礎練習にはもってこいだ。

ガチャ引いてカードをアレに変えるとか何の隠喩よ?

『Trombone Champ』には、さまざまなコメディ要素がある。というのも、この『Trombone Champ』は(気づく人は気づいているかもしれないが)『ダークソウル』シリーズのパロディとなっているらしい。隠されたキャラクターを見つけたり、アンロックできるアイテムなども存在する。そのアンロックできるアイテムを、ガチャ要素で手に入れることができる(ほんの一部だが)。筆者は最近、銀と赤と青のトロンボーンを手に入れた。

曲を演奏すると、報酬として「TOOT」を貰える。その「TOOT」を握りしめて、スタート画面から「COLLECT」に向かおう。「GIMME A SACK」というボタンを押すと、499TOOTで1回4枚のトロンボナーカードがガチャが引ける。石3000個で10枚引けるガチャに比べれば、完全無料なのでお安いものだ。ガチャを引くと、トロンボーンなどの金管楽器、作曲家や演奏家のカードがもらえる。そして『あるところ』で『あること』をすると、真っ赤な子をオトモダチにできる。そのトモダチは、TOOTで稼いだカードを組み合わせることで、アイテムを生成してくれるのだ! ちなみに現在、カードは全50種類。もちろん被る。被ったカードはアイテム生成にも使えるが、「TURD」に変換することも可能だ。ただ、バッハやシューベルトを「TURD」に変えるという意味が分かった瞬間「ちょっとそれは……」と思ってしまうかもしれない。そう思ったキミは懸命だし、正解だね。けれどまぁ、筆者も数多くの英雄を売り払ってきた罪業を背負っている筆者は、何とも言えないかな!
他にも『Trombone Champ』は様々なアンロック要素を備えている。トロンボーンを吹きながら、隠された秘密をどんどん解き明かしていこう。

このゲームは、楽しい。筆者も数年以上音ゲーに触っているが、下手すぎてプレイが嫌になるゲームは多かれど、下手でもプレイしていて楽しい音ゲーにはなかなかお目にかかれない。むしろ、下手な方が撮れ高大きいとかどういうこと!? という気持ちだ。このゲームは、間違いなくプレイした人間を元気にするパワーを持っている。
「Game*Spark」におけるDan Vecchitto氏へのインタビューによると、『Trombone Champ』の配信や収益化はOKとのこと。YouTuberないしVtuberは必見のゲームではなかろうか。個人的には、音ゲー中心に腕を鳴らしている配信者さんにこそ、このゲームをプレイしてほしいという気持ちでいっぱいだ。
今は英語にしか対応していないが、多言語対応を前向きに検討しているとのこと。その場合、「TURD」はそのまま邦訳するのか、筆者は非常に楽しみでならない。……で、「turd」ってどういう意味かって? 「ク●」だよ

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Trombone Champ

タイトル: Trombone Champ
ジャンル: カジュアル, インディー
開発元: Holy Wow
パブリッシャー: Holy Wow
リリース日: 2022年9月16日