ボタン1つの激辛 音ゲー 『A Dance of Fire and Ice』

腕や指がどれだけあってもできない音ゲーはたくさんあるが、ワンボタンでできる音ゲーがある。『A Dance of Fire and Ice』、くるくると回る赤と青2つの惑星の回転を使ったリズムゲームだ。音ゲーとしては一風変わっているが、プレイスタイルはシンプル。リズムに合わせてキーを叩くだけ。音ゲーを始めてみたい!と思う人にとっては、とても魅力的なゲームだろう。

だが筆者は、このゲームを「あえて」音ゲー「ヘヴィ」ユーザーにこそおすすめしたい。シンプル・カジュアルの皮を被った音ゲーマーへの挑戦状、『A Dance of Fire and Ice』を紹介する。

simple is BEST

『A Dance of Fire and Ice』は、ワンボタンスタイルのリズムゲームだ。開発元は「Rhythm Doctor」などのワンボタン・リズムゲームを開発している『7th Beat Games』。赤(Fire)と青(Ice)の球体が円状にグルグルと回り、レーンに沿って進みながらゴールを目指す。プレイヤーは音楽に合わせてボタンを押す、というスタイルだ。ゲーム中に使うのはSpaceキーのみ。とてもシンプルなゲームだ。起動も早いし動作も早い。そしてリトライも同じく早い。まさに音ゲー初心者にはうってつけ。……だと、思うだろう? でもそれは大きなミステイク。リトライ動作が早いゲームとは、どういうことか。そう、これは「シンプルに鬼」なゲームなのだ。

but NEVER last long

待ち受けているのは、1ミスで落ちの鬼仕様。フルコンしなければ命はない。また全ての譜面パターンが独自設計。レーンに重なる球体の動きに対応するだけでは、鬼レーンを前に精神が脱落してしまう。1ステージの時間も長く、A/B面に分かれている。特にB面の鬼畜っぷりは、音ゲー狂いも「発狂」もの。公式が「非常に厳格で容赦のない」と称しているように、慈悲はない。ノーツを基本として成立し、プレイ時間が均された譜面に慣れた音ゲーマーには、非常にスコヴィル値の高い激辛ゲームとして立ちはだかる。最初の内は、目で追うよりも耳で追った方がミスは減るかも(?)だ。そんなジョロキアのような鬼畜ゲームだが、音ゲー歴戦の猛者はむしろ「燃えるッ!」というものではなかろうか。システムも難解ではなく、サクッと遊べてサクッと諦めるカジュアルさは少し嬉しい。PCでの動作も軽めなので、よりライトに、よりシンプルに、何より「ヘヴィ」に音ゲーを楽しみたい音ゲーマーには特におすすめだ。

Again, SIMPLE is best

譜面はシンプル&ロジカル。一見すると迷路のように見えるレーンだが、プレイに慣れてくると、直線は8分音符、進行方向に対して右に90度曲がっていれば16分音符、三角に回るのは3連符、と譜面が見える設計になっていることに気づく。これは、実に面白い! ……ただ、その通りに打てれば苦労しないわけで。そこに慣れるまでが厄介なところに「音ゲーらしさ」が詰まっている。やはり、シンプルは「強い」のだ。

ノーツを「叩く(打つ)」のはリズムゲームの基本だが、『A Dance of Fire and Ice』はリズムを「刻む」ゲームだ。筆者はこのゲームをプレイしていて、メトロノーム、ないしパーカッション(打楽器)の基礎練習を思い出した。他のリズムゲームでもより高いスコアを出すためには、曲のリズムを刻む訓練が必要だ。特に4分音符(1拍)に対する8分音符や16分音符、3連符などは音ゲーをやる上で覚えていて損のないリズムなので、他の音ゲーでプレイに詰まった時は、『A Dance of Fire and Ice』をプレイしてみよう。また創作譜面にも対応しており、Steamのワークショップには数多くの譜面が存在している。クオリティも曲数も、コストパフォーマンスも折り紙つき。その上、リズム刻みを覚えられるなんて一挙両得だ。音ゲーのやりすぎで腱鞘炎を起こしたら、ワンボタンでリハビリしよう。大丈夫。音ゲーマーが音ゲーなしで生きていける時間・人生など、ないのだから。

(Visited 2,013 times, 1 visits today)

A Dance of Fire and Ice

タイトル: A Dance of Fire and Ice
ジャンル: インディー
開発元: 7th Beat Games
パブリッシャー: 7th Beat Games, indienova
シリーズ: 7th Beat Games, indienova
リリース日: 2019年1月25日