すべては知ることで救われる ―― 嘘をつくのは『GNOSIA』

『GNOSIA』は不可思議なゲームだ。人狼系ゲームを謳ってはいるが、テキストアドベンチャー的側面もある。しかし、それだけでは形容しがたい。正しくはミステリなのかも知れない。形容する言葉が見つからない、けれど面白い。『GNOSIA』はそんなゲームだ。

本作は、宇宙船というSF的な密室で行われるソーシャル・ディダクション風ADVゲーム――つまりは、ひとり用の人狼(系)ゲームだ。宇宙船の中で行われる人狼ゲーム的議論と投票、そしてループする宇宙という要素が見事に噛み合い、『GNOSIA』というSFミステリを創り出している。それでは、ループする宇宙で「何が嘘なのか?」「何が真実なのか?」を疑い合う旅路、『GNOSIA』を紹介しよう。

SF世界を舞台にした人狼(系)ゲーム

本作は人狼ゲームに即したシステムで進む。役職もSFチックな名称となっており、例えば「グノーシア」は人狼、「乗員」は村人の役割だ。他にも狂人、占い師や霊能者、狩人や共有者、狐にあたる役職もある。物語の進行によって役職名と役割が段階的に理解できるようになっているので、人狼ゲームのルールを知らなくても安心だ。

さて、『GNOSIA』の舞台は宇宙船。人間を消す「グノーシア」という危機に際し、「人間」サイドと「グノーシア(最大6名)」サイドを含めた乗組員(最大15名)たちは議論と投票で「コールドスリープ」対象を1人ずつ決めていく。そして乗組員が眠っている時、グノーシアは人間を1人消す。……という一連の流れを繰り返す。最後にすべてのグノーシアをコールドスリープすれば人間の勝ち、また乗員の半数以上がグノーシアとなればグノーシアの勝ちとなる。そして、人数や役職はループごとに変わる。場合によっては「グノーシア」「乗員」以外の役職の一部が存在しない(狂人や狐がいない、など)こともある。そんなループを、プレイヤーと「ある人物」は何度も何度も何度も繰り返していく。

まずは主人公のステータスを育成しよう。1つのループを終えると経験値(EXP)がもらえるので、EXPを各ステータスに振ろう。まずは疑いをかけられないようなステータスを上げることをおすすめする。全ステータスを効率よくカンストする方法もあるにはあるが、当記事では黙秘する。あとはプレイヤーの腕次第。各々で攻略法を模索してほしい。

個性豊かなキャラクターたち 彼らの”すべて”を知ろう

『GNOSIA』という物語を彩るのは、個性豊かなキャラクターたちだ。男女という性別が決まっているものもいれば、「汎性」という性別が決まっていない中性のキャラクターもいる(主人公も汎性を選択できる)。そして人間かどうか怪しいものも存在する。また出身の星もそれぞれ異なり、文化や思想にも多様性が見られる。キャラクターグラフィックも多様性と汎性(中性的)を意識しており、個々が光るデザインだ。そんな総勢14名のキャラクターには様々なバックグラウンドがある。そんなキャラクターごとの個性はそれぞれの性格に表れており、議論での立ち位置やも行動にも反映されている。同じくステータスにも差があり、議論で使ってくる「コマンド」も異なっている。そんな個性豊かなキャラクターたちと議論を進めていくのは困難だ。しかし難しく感じるのは、主人公のステータスが育ち切っていない内だけなので安心してほしい。ループを繰り返していく内に、プレイヤーにも各キャラクターの個性が見えてくる。そこを糸口に、議論と投票を優位に進めていこう。ループを進める中でキャラクターごとのイベントを発生させ、各キャラクターのプロフィールや宇宙船に関する情報を手に入れよう。各ループによってキャラクターの立ち位置は変わる。例えば、ある条件下で本性を現した時のキャラクターは、普段とは行動も言動も異なる。その変化を知れば、キャラクター理解がさらに深まっていくはずだ。その理解が深まるほどに、最初の印象とは全く異なる人物が、あなたの目の前に立っている。

そのキャラクターはどういう人物なのか、どんな過去を抱えているのか。何に怯え、何を求めているのか。――それらを知っていくと、物語はターニングポイントを迎える。

終わらないループの謎を解く「鍵」

条件を満たすと、プレイヤーは状況を設定できるようになる。つまりは、プレイヤーの役職を選択し、議論に参加する人数やグノーシアの人数、状況に存在する役職の種類まで(エンジニアなし、ドクターあり、など)、プレイヤーが自由に決定できるようになるのだ。「乗員」として参加できるのはもちろん、「グノーシア」としてループに参加することもできる。イベント回収を優先したいなら、「イベントサーチ」機能を使ってイベントが発生しやすい条件で、ループをクリアしよう。ストーリーを攻略する「鍵」は各キャラクターの情報を得ることで満たされる。そのためにはループを繰り返し、ループに次ぐループの果てに、『GNOSIA』の謎を解く「鍵」を掴む必要がある。そして、何が起こっても疑わず、畏れず、すべてを知ることができた時、嘘をついている『GNOSIA』に辿りつくことができるのだ。

本作は人狼(系)ゲームを通して、SFアドベンチャーないしミステリとして楽しめる作品だ。ストーリーはネタバレ厳禁というほどに面白く、伏線の回収も気持ちがいい。キャラクターの魅力に関しては、エンディングを迎える頃には誰が好きだとか言えないくらいに愛着が湧く。余談ではあるが、筆者は本作にのめり込んで、実績をすべて解除してしまった。実績の数も26個と多い方ではないので、実績コンプリーターにもおすすめできるゲームだ。ゲーマーとして自分の推理力を試したいなら、嘘を見抜けるステータス「直観」を上げない縛りプレイも楽しめる。他にも、考察好きの人にも是非おすすめしたい。ローディング画面に表示される文言や、グノーシス主義、ラヴクラフトなどのSF・ファンタジー要素の元ネタが満載なので、調査や考察し甲斐がある。これを機に、本作のループの謎やエンディングについての考察に議論という花を咲かせてみるのも一興。どう楽しむか、どうやり込むかは、プレイヤー次第。各々、スリリングな宇宙船ライフを楽しんでほしい。

それでは皆様、良い旅を!

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GNOSIA

タイトル: GNOSIA
ジャンル: アドベンチャー
開発元: Petit Depotto
パブリッシャー: PLAYISM
シリーズ: PLAYISM
リリース日: 2022年1月23日