狂気とグロテスクを極めたサバイバル・ホラー・シミュレーション『The Forest』

ホラーゲームの一大ジャンルである「サバイバルホラー」。「バイオハザード」シリーズによって広まったこのジャンルだが、これに「オープンワールド」「クラフト」という要素を盛りにもったゲームがある。今やサバイバルホラーの金字塔的存在になったゲーム『The Forest』だ。グロテスクな表現が苦手な人は注意してほしい。

“Enter the world of survival horror…”(『バイオハザード』のロード画面)という文言が似合うサバイバルホラーゲームが、まさかインディーで発売されるとは、90年代のゲーマーは予想だにしなかっただろう。ひとりでもみんなでもやりこめるサバイバル・ホラー・シミュレーター『The Forest』を紹介する。なお『The Forest』は「CERO:Z」指定となっており、正気では想像できないほどのグロ要素や衝撃的なストーリー展開を含む。特に、人間が人間を食べるという『カニバリズム』要素に関して、抵抗のある人には特におすすめしない。その点に留意した上で、禁断の話題作『The Forest』に触れてほしい。

人喰いミュータントは緑の辺獄で哄笑う

主人公のエリックは飛行機墜落事故に巻き込まれ、深い森におおわれた島に不時着する。着陸時のショックで薄れゆく意識の下、息子のティミーが謎の赤い人物にさらわれるのを目撃するエリック。事故の生存者は自分しかいない過酷な状況で、エリックは息子を探し出すために島の探索を始める。しかし、エリックに立ちはだかる森は、人喰いミュータント(原住民)の巣窟だったのだ。さらわれた息子の行方を追いながら、エリックは島や人喰いミュータントの謎を解き明かしていく。探索の果てに、エリックは息子ティミーの元に辿り着くのだが、――というのが『The Forest』の大まかなストーリーだ。このストーリーを忘れると、プレイ時間が70時間超え……なんてこともあるので注意しよう。『The Forest』には骨子となるストーリーが存在するが,それ自体がイコール’楽しさ’ではない.『The Forest』というゲームの楽しさを約束してくれる、骨組みなのだ。もちろんストーリーも考察し甲斐のある作りとなっているので、どのように愉しむかはプレイヤーの自由だ。

クライモリで生き残るためには

『The Forest』のサバイバル性は本格的であり、プレイヤーは生存に関する多くの要素を管理しなければならない。例えばステータスだ。主要なステータスはゲージとして画面右下に表示されている。「防御」「体力」「渇き」「空腹」「スタミナ」「エネルギー」の6つだ。この内「渇き」「空腹」「エネルギー」の3つは時間経過で減少していく。他にも「体温」の調節など、人間の生存に関わるステータス管理をプレイ上で要求される。その上、原住民と遭遇した際は戦闘となる場合もある。戦闘になればダメージを受けること必須。まさしく、サバイバルだ。まずはライフラインの確保が優先だ。「サバイバルガイド」を確認しながら、拠点となる建築物をクラフトしよう。建築物は「火」や「避難所」「保管庫」「罠」など多岐にわたる。何をどのタイミングで造るかはプレイヤーの自由。もちろん、食料の確保も重要だ。機内食はもちろん、現地で採れたうさぎやキノコ、襲ってきた原住民の手足などを食べてエネルギー源にしよう。肉は過熱しないといけないので要注意だ。他にも薬になる葉っぱ(合法)や、毒になるキノコ(違法ではない)などが森で手に入る。主人公を狙ってくる原住民の襲撃を避けながら、ライフラインを確保しつつ、サバイバルとクラフトに勤しもう。
プレイモードは、シングルプレイヤーとマルチプレイヤーの2種類。ひとりでサバイバル(クラフト)ホラーをシミュレートするもよし。みんな(最大8人)で火を囲みながら正気度が下がる肉でBBQするもよし。『The Forest』は、プレイヤーの自由だけは約束してくれる。(ただしホラーからは逃げるな)

謎がひしめく森の奥

『The Forest』には数多くの謎が存在する。その謎はエンディングへ到達して解決するものもあれば、そうではないものもある。例えば「乗客リスト」だ。墜落事故直後、主人公が乗っていた飛行機の後部でリストを入手できる。このメモには飛行機後部に搭乗していた乗客の名前が記されているのだが、実際の後部座席数と数が合わないのだ。しかもリストに記載されている主人公の座席は「6A」だが、実際に乗っていた座席は「6F」だったという奇妙な現象。そもそも、この『森』にはなぜ人の肉を食べる原住民が存在するのか。ティミーを攫った男が原住民の目から逃れられたのはどうしてなのか。そもそも、なぜ「赤い男」は主人公には目もくれず、ティミーだけを攫ったのか? その他にも、この森は多くの謎を孕んでいる。謎を見つけて考察に耽り、新たなホラー要素を見つけてゾクゾクするのも、『The Forest』を嗜む1つの方法ではないだろうか。

ともすればプレイの目的を見失いがちになってしまうオープンワールドサバイバルクラフトゲーム。だが『The Forest』は、サバイバルホラーを主軸においた骨太なバックグラウンドに支えられている。その上、考察の余地を残したストーリー設計となっているため、ゲームの世界もストーリーも自由に楽しめる。ミュータント狩りに邁進したり、クラフトに勤しんだり、ストーリーを考察するのも全てプレイヤー次第。まさに、「プレイヤーの自由」を尊重して作られたゲームだ。とある施設で、プレイヤーは究極の選択を迫られる。選択ひとつで、それからのプレイングが変わってしまうほどの選択だ。あなたはどちらを選ぶだろう? これもまた、プレイヤーの「自由」だ。

2023年2月には、続編とされる『Sons Of The Forest』のリリースを予定している。あるエンディングの結末を知っているプレイヤーなら、期待が高まるタイトルだろう。『The Forest』プレイ時に深まった謎が、『Sons Of The Forest』で解決するかもしれない。『The Forest』の謎に挑戦するのは、今からでも遅くはない。

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The Forest

タイトル: The Forest
ジャンル: アクション, アドベンチャー, インディー, シミュレーション
開発元: Endnight Games Ltd
パブリッシャー: Endnight Games Ltd
リリース日: 2018年5月1日