壺おじって『Getting Over It with Bennett Foddy』てタイトルやったんや

Google検索で「壺おじ」と検索するとヒットするゲーム。それが『Getting Over It with Bennett Foddy(以下、GOI)』だ。

「Jazzuo」が2002年に生み出したB級ゲーム『Sexy Hiking』をインスパイアしている、いわゆる「登る系」ゲーム。マウスでハンマーを動かしながら、ひたすら山を登る。ただそれだけ。ただ、それだけのゲーム。しかし、そのシンプルさゆえに難しさが際立ち、マウスやコントローラーを投げるゲーマーが後を絶たない。今回は、見かけはシュール・中身はSteam界の「賽の河原」または「地獄の一丁目」――『GOI』を紹介する。

『GOI』にとって――「ゲーム」とは

『GOI』で目を惹くのは、壺(公式曰く「大釜」らしいが、綴りは”pot”なので壺にしておく)にすっぽりと入った怪しいおっさ……男。そして男が持っている長物のハンマー。一体、お前は何がしたいんだ。……と、ここで考えてしまっては話が進まない。『GOI』の目的は、ハンマーと壺だけで壮大な山を制覇し山頂を目指すことだ。ストーリーは、考えるより感じろ。なぜ男が壺に入っているのか、ハンマーだけで登っているのか、そもそもこの山は何なのかさえ作中では明らかにならない。
ゲーム中のストーリーと思しきものは、進めていくと作者本人から語られるナレーション音声だ。ゲームをプレイする上での気構え、『GOI』のオマージュ元から、ゲームやネットの文化、ゲームプレイヤーに対する哲学的問いかけなど様々だ(それがストーリーなのかどうかは最後まで分からないが)。このナレーション音声、開発者の “Bennett Foddy” のものなのだが、――微妙どころか、最高にウザイ! このメタなウザ絡みも、『GOI』の味ではある。かと言って設定に関係あるのかは謎なんだけど。
まぁ、こういうゲームは頭を真っ白にしてプレイできるよ。ストーリーとか設定だとか余計に考えるものは必要ないんじゃない? と、キミはプレイしようとするだろう。
3分後には渋い顔をしているんじゃないかな、多分ね。

『GOI』にとって――「システム」とは

システムはいたってシンプルだ。カーソルを動かしてハンマーを操作し、ハンマーを引っかけながら登るだけだ。HP・残機という概念もない上に「死ぬ」というゲームオーバーもない。オートセーブ以外のセーブ機能もない。強化アイテムもない。ただ、ハンマーを使い、山を登るだけだ。練習を積むことで、ジャンプ、スイング、登山、滑空が可能だ。だが、基本的には、『GOI』の非常に特殊な操作性に悩むことになる。まずは、目の前にあるハンマーの操作に慣れることから始めよう。
はじめに鬼ゲーといった通り、『GOI』は意図的にプレイングを辛く感じるように設計されたゲームだ。攻略に際して、偶然はまず起こりえない。運要素すら許されていないのだ。しかし、まったくクリアできないというバランスで作られてはいない。「ものすごくプレイが苦しいけれども超考えてやったらクリアできたわ」レベルだ。感覚としてはパズルゲームに近いと思うので、目の前にある山を安定して登る方法を真面目に考えながら進めていこう。

『GOI』にとって――「特定の人」とは

このゲームには「特定の人に向けて、誕生したゲーム。特定の人を、傷つけるために」とあるように、開発者からプレイヤーに向けての「挑戦状」にも似た想いが込められている。その特定の人とは、ゲームを「ただクリアしたいと思う人たち」である。先に進みたいという気持ちが逸るほど、落ちてしまった時の精神的ダメージは大きくなる。結果、冷静さを失い焦燥感に駆られ、操作を誤るという負のスパイラルに陥るのだ。また、クリアに運要素が絡まないので自分がツイてなかったという言い訳すら許されない。敗北者の屍が積もる壺。『GOI』が「現代の賽の河原だ」と言われる所以はここにある。
なんだよそれクソゲーじゃないかと思ったキミ。それは「若気の至り」ではないかね? 何事も目の前のものを片づけてから。目の前の山の登り方を覚えてから……、ゲームは始まるのだ。最初のうちは特殊な操作に慣れないかもしれないが、自分の頭で考えて丁寧に操作できれば、安定して山を登ることができるのだ。もちろん、慢心してはならない。プレイし続けるにつれ、やり方のコツを掴んでいくと、落ちてからのリカバリーも早くなっていく。そうやってプレイヤーは自分自身が成長していくことに対する充実感や達成感を覚えていくのだ(※ 個人差あり)。そのくらいやりこんで(しまった)プレイヤーをYouTubeとかニコ動で見かけるけれど、彼らは『GOI』を、「『GOI』はいわゆるクソゲーとは違う」って言うんじゃないかな。面白いしね。

「やり直すことは、やり始めるより辛い。もしその心の準備が整っていなければ…既に嫌なことがあった日だとかなら、この先にあるものはあまりにも辛いかもしれない。それなら気軽に離れて、また戻ってきてください。私はここで待っていますから。」
ゲーム序盤で “Bennett Foddy” がプレイヤーに語り掛ける言葉だ。『GOI』はこういうゲームで、こういうスタンスだ。困難で、大変で、それでもシュールで笑えて、いつでもやれるゲームだ。Steamでの評価は「非常に好評」。これは、たくさんの人がこのゲームを通じて心を揺さぶられ、そして同時に砕かれた証でもある。
壺おじと一緒に、山頂を目指してみよう。そうすればキミも、動画で『GOI』を配信できるかもしれないぞ。

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Getting Over It with Bennett Foddy

タイトル: Getting Over It with Bennett Foddy
ジャンル: アクション
開発元: Bennett Foddy
パブリッシャー: Bennett Foddy
リリース日: 2017年12月7日