文字や言葉を使用せず、ビジュアルや音楽だけの演出で作られたシンプルなゲーム、それが『Journey（風ノ旅ビト）』である。本作は具体的なグラフィックやコミュニケーション機能を使用せず、飛ぶ、滑るの2つの操作だけでプレイする。こうした、最小限に抑えられた操作と限られたグラフィックで最大限のプレイ感覚を引き出し、プレイヤーの心を満たしてくれる。

これについては、『ICO』や『ワンダと巨像』を制作したゲームデザイナーの上田文人氏がTwitter上で、「Journeyをプレイしていて感じたこと、”暇つぶし”のコストパフォーマンスではなく、”感動”のコストパフォーマンスの高い稀有なゲーム。こういうゲームこそ多くの人にプレイしてもらいたい」と称賛している。また、主要なゲーム賞で前代未聞の6冠を獲得し、さらにはサウンドトラックがグラミー賞にノミネートされるという偉業を成し遂げた非常に評価の高いゲームでもある。

『Journey』の世界観とは？

音声や文章は一切登場しないストーリーは、プレイヤー自身が解釈していくことになる。プレイヤーは広大な砂漠が広がる未知の世界で目覚め、砂に沈む古代の文明を見つけていく。目的地が明確に示されておらず、そもそも地図のようなものが存在しないため、何をどうすればいいのかそれを知ることから始まっていく。ゲーム内に現れるのは、朽ち果てた遺跡や空を飛ぶドラゴンのような生き物など数種類で、グラフィックから得られる情報としては少ない。しかしながら、これらの少ない情報だけでこの世界は語られている。背景に流れる美しくも心地良い音楽に聞き入りながらプレイしていくと、癒されながら楽しむことができる。

砂漠を探検して先に進んでいこう

基本的な操作は遺跡の上を飛び、砂漠を滑り降りていく。ただそれだけである。広大な砂漠が広がっているが、砂漠を滑っていると遺跡などが現れ、それらに触れて感じた感覚が全てプレイ体験として残る。遺跡の上に飛び乗ると、空中を漂っている細切れのスカーフが舞っているのが見えるので、それを回収することでステージ内を高く飛び滑空できるようになるなど、プレイヤーは考えて情報やアイテムを獲得していく。遺跡内では光を放つシンボルマークや長いスカーフが登場するので、それらをチェックしていくことで、遺跡内の扉を開いたり、橋がかかったりして先に進めるようになっていく。触れるべきポイントをチェックできたかどうかは、遺跡内のどこかで光で表されているので、光を見つけながら謎を解いて進めていこう。

一期一会の友人と共に旅をしよう

『Journey』には、主人公のセリフが全くない。ゲーム内で触れるもの、感じたこと、――それらは全部、プレイヤーのものだ。自分自身こそ、ゲームの主人公だ！という没入感を体験できる。それが『Journey』の醍醐味だろう。

そんな本作だが、オンライン機能に対応している。他のプレイヤーとの協力プレイをすることも可能だ。時折、遺跡を目指して砂漠を進んでいく中で、他のプレイヤーが操作する同じ姿のキャラクターと出会うことがある。協力して進めていくのか、他のプレイヤーを無視して自分1人で進めるかはプレイヤー自身が選択できる。彼らと意思疎通を図る方法は”共に行動する”しかない。音を発して共鳴することもあるが、それ自体がコミュニケーションツールではないので、あくまで共に行動する以外に方法はない。コミュニケーションツールがないということは、次に出会ったプレイヤーが先程出会ったプレイヤーと同じかどうかの判断ができない。『Journey』は、そんな一期一会の出会いを大事にできるゲームだ。

操作方法が2つしかないこと、最小限のグラフィックで表現されていること、コミュニケーションツールを使用しないこと、これらのどれをとっても不便に感じることはない。むしろ最低限の機能に絞ったからこそ、その情景や物事に入り込んでいき、心が満たされる内容となっている。光と音が中心の感覚頼りのゲームとなってはいるが、滑り降りる時の爽快感や、チェックポイントを通過して次のステージへと進めた時の達成感は他のゲームにはない感覚がある。特に、コミュニケーションツールがないことについては、他のプレイヤーと出会った当初は不安に感じることもある。しかしながら、共に行動していくうちに自然と仲間意識が芽生え、言葉を交わさなくても互いを理解できているような感覚になれるのは、とても素晴らしい。

Journey

タイトル： Journey
ジャンル： アドベンチャー, インディー
開発元： thatgamecompany
パブリッシャー： Annapurna Interactive
シリーズ： Annapurna Interactive
リリース日： 2020年6月12日