はかなくも勇敢な卵アクションADV 『LOST EGG 2: Be together』

特別な事情がない限り、日本の冷蔵庫の中には必ずあるといってもいい食材、卵。今回紹介するのは、食卓の主役であり、時には脇役であり、命の起源でもある「卵」が冒険するゲームだ。インディーメーカー「キミドリソフト」の300円シリーズ第5弾、『LOST EGG 2: Be together』。前作から約2年。あの、はかなくも勇敢な卵が、新たな力を手に入れて帰ってきた。とはいえ、本作はシリーズ「1」から遊ばなくても十分楽しめる。はかなくも勇敢な卵が繰り広げるカジュアルなアクションアドベンチャーを堪能しよう。

300円で買えるゆる系アクションADV?

『LOST EGG 2: Be together』を開いて、まず心を惹かれるのはタイトル画面だ。美しい緑の中に、2つの卵が寄り添うように映っている。流れるのは美しいピアノサウンド。そしてステージをプレイすると、美麗でノスタルジックなステージと、ヒーリングミュージックのようなサウンドがプレイヤーを迎えてくれる。リビング、夕暮れの教室、店の中、路地裏……我々が普段目にする風景が、「卵」という小さな命の視点でより大きく映る。世界は果てしない、そして美しい。そう思わせる癒し系ゲームだ。操作もシンプルで、ジャンルには「カジュアル」って書いてあるし、簡単に楽しめるゆるゲーなのかな……とまず思う。だが、まぁSteamのストアページを覗いてみよう。レビュー欄を見てほしい。「卵が嫌いになった」「思わず机を破壊した」という阿鼻叫喚の嵐。勘のいい方はお気づきと思う。そう、これは安価で買える「ハード」アクションアドベンチャー(癒し)なのだ。

ナマタマゴは目玉焼きの夢を見るか?

プレイヤーは卵を操作して、フライパンを目指す。卵の目的は、フライパンにダイブして「目玉焼きになる」ことだ。このゲームの卵はなぜかジャンプでき、なぜかふんばり(ブレーキ)が利く上に、なぜか自転できる。この3つのアクションを駆使してステージをクリアしよう。また当然ながら生卵はもろい。壁や床にぶつかるたびに耐久度(ライフ)が減っていき、ライフが0になるとゲームオーバーとなる。制限時間とライフがなくなる前に、目玉焼きになる必要がある。「なんだ、簡単じゃん」と思うだろう。ところがぎっちょんちょん、独特の浮遊感のある卵のジャンプと、利きそうで利かないブレーキ、楕円形の物体が着地・自転する際の不規則性がプレイヤーを苦しめる。アンガーマネジメントは必須スキルなので、この際に覚えておくと現実でも役に立つだろう。また卵の成長要素として「移動すればするほど殻の耐久度がアップ」し、クリアしやすくなるシステムを搭載。転がるにつれて逞しくなる命の輝きに、プレイヤーは魅了されること間違いなし。ついでに、隠しアイテムとして各ステージに存在する「トースト」の存在がある。明太子に白いごはんが欠かせないように、目玉焼きにトーストは欠かせないのだ。「クリアタイム」と「隠しアイテムを手に入れたかどうか」でスコアが決まるので、実績解除を目指すならトーストはマストでゲットしておきたい。

「Be together」って そういうことですよね?

このゲームは、オンラインマルチプレイに対応しており、最大10人で一緒に遊べる。コミュニケーションツールとして、スタンプ機能も搭載。一期一会の出会いを大事に、互いに挨拶を交わしたり、時には言葉の要らない時間を共有しながら、『LOST EGG 2: Be together』を堪能しよう。――あ、今思い出したんだけど。大きな声では言えないんだけどね、仲間の卵が割れてしまうと「回復アイテム」を落とすんだ。あまり、大きな声では言えないんだけど。まぁ、最大10人で遊べるんだ。うん。

冷蔵庫から取り出した卵を、うっかり手が滑って、床に落としてしまった時の喪失と絶望。『LOST EGG 2: Be together』は、そんな感傷を我々に思い起こさせると同時に、困難に立ち向かう勇敢さを教えてくれる。全実績の数は14個。うち半分はステージのパーフェクトクリアだが、プレイヤーの方々においては負けず挫けず、頑張っていただきたい。このゲームのプレイには、かなり精神力を使う。もしこのゲームに癒しを求めているなら、悪いことは言わないので回れ右をしよう。逆に、そうではない人を安価で虜にするゲームだと約束する。プレイが例え難しくても、諦めずに転がり続ければ、夢や希望、憧れへと届く。ゴールした時の達成感は、言葉にできないだろう。

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