3つの小さな物語から始まる 1つの大きな物語『白昼夢の青写真』

是非ともプレイして欲しい1本があります。美少女ゲームブランド「Laplacian(ラプラシアン)」が手掛けた『白昼夢の青写真』というアドベンチャーゲームです。近年の美少女ゲームは「人気絵師のファングッズ」のような扱いになっていますが、あえて「シナリオと演出で勝負」という、今のご時世にしては珍しい挑戦的な作品なのです。美少女ゲームと聞くと抵抗のある人もいると思います。エロシーンばかりで中身がなかったり、無駄にプレイ時間が長かったり……。しかし『白昼夢の青写真』はそんなイメージを覆す作品なのです。そもそも今回紹介するSteam版は全年齢版となっており、成人向け描写に抵抗のある人でも安心してプレイができます。

 

さて、本作の大筋は「一人の青年と少女が織り成すSF純愛物語」で、いわゆる感動系の「泣ける作品」です。しかし、本作は単なる泣きゲーではありません。シナリオにとある仕掛けがあり、これが実に巧妙できっと驚くと思います。プレイ時間も16時間ほどと週末にプレイするだけで終わる程度です。そこまで長くはないので、これから美少女ゲームに触れてみようという人にはピッタリではないでしょうか。

3つの異なる物語が1つの物語へと収束されていく「シナリオの仕掛け」

一般的なアドベンチャーゲームのシナリオの構成は、1本の共通シナリオから各キャラの個別のシナリオへと分岐していきます。しかし白昼夢の青写真はというと、なんと真逆になっており、個別の3つの物語が1つの物語へと集約されていくのです。3つの物語を簡単に説明しますと……

▼CASE-1
かつて抱いていた熱意を失い無気力な毎日を送る45歳の非常勤講師と、いつも一人で過ごしていた表情に陰りがある女学生との背徳的な恋の物語。

 

▼CASE-2
中世ヨーロッパを舞台に、酒場で働きながら密かに脚本を売買する男と、演劇を愛している貴族の女性の身分を超えた恋物語。

 

▼CASE-3
動かなくなったキャンピングカーに引きこもり不登校でいる(童貞の)少年と、教育実習生として実習に来ている(童貞くんには少し刺激が強い)女子大生との淡い恋の物語。

 

なんと3つのシナリオは時間も場所もすべて異なる完全に独立した話になっているのです。しかし、これが最終的には1つのシナリオに繋がっていくのです。これこそが、はじめに言った「シナリオの仕掛け」なのです。この3つのシナリオは順番はランダムで開始され、最終的には4つ目のシナリオの『CASE-0』へと集約されます。あまり詳しく書くとネタバレになりますが、これらの3つの物語は実は「平行」して進んでいるのです。

記録と記憶と世界

この3つの物語は、時代も世界観も違い、明るい話や切ない話、暗い雰囲気の話だったりと、同じゲームとは思えないほど、全く違ったものに仕上がっています。それぞれが単体でも完結するほどの練り込まれた物語になっていますが、この3つの物語には共通したものがあります。それは「白いロングヘアーと赤い瞳を持ったヒロイン」の存在です。はたしてどんな関連性があるんだろう? と思いながら物語を読み進めていくほどに、その謎は深まっていきます。またヒロイン以外にも、「3つの物語」には数々の伏線が張り巡らされており、その伏線は『CASE-0』の結末に自然と帰結するのです。そうして全ての「意味」を理解したとき、あなたはこの物語の虜になっていることでしょう。

 

『白昼夢の青写真』のシナリオの完成度の高さは、ここ数年のアドベンチャーゲーム中、随一です! 今までにも「複数のルートに伏線を散りばめ、最終的には1本にまとめる」という作品はありましたが、ここまで完成度の高い作品はありません。シナリオ同士の繋がりや伏線回収などを一切の矛盾なく繋げるというのは、容易ではないでしょう。物語の仕掛けも然ることながら、それぞれの物語自体のクオリティも高く、感情移入できる情緒的なセリフ、雰囲気の良い世界観、更には情感を感じさせるBGMと、全てが一級品です。カジュアルにプレイできながらも、決して短いとは感じず、濃密なシナリオとも相まって、ボリューム感は実際のプレイ時間の何倍にも感じられます。クリア後の満足感は感動的です。普段アドベンチャーゲームを遊ばない人でも、このゲームだけは絶対にプレイした方がいいと思います! 『白昼夢の青写真』は、2020年代を代表するアドベンチャーゲームとして語り継がれることでしょう!

 

©Laplacian

 

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白昼夢の青写真

タイトル: 白昼夢の青写真
ジャンル: アドベンチャー, カジュアル
開発元: Laplacian
パブリッシャー: Laplacian
リリース日: 2022年2月9日