和風ファンタジーの王道に浸ろう ~ 『大神 絶景版』

「どうして『太陽は昇る』が、TOKYOオリンピック2020で日本代表選手の入場曲じゃあなかったんだ!?」と筆者は思う。このゲームの曲ほど大和魂を感じる曲は、そうそうないだろうに! 筆者は日本が好きで、和が好きだ。SUSHIが好きだし、天プーラも好きだ。そして何より味噌スープを愛している。ならばどうして『大神』を愛せずにいられよう! ということで今回は、大和魂が詰まったCAPCOMのアクションゲーム『大神 絶景版』(※以下『大神』)を紹介しよう。ちなみにPS2版『大神』と、STEAM版『大神 絶景版』の違いは、実績の有無や解像度の違いしかない。内容はオリジナル版の『大神』と同じだと追記しておく。

絶景哉! 絵巻のような和テイスト溢れるグラフィック

『大神』の舞台は、和のテイストに溢れた「ナカツクニ」だ。作品の概要は「ヤマタノオロチ」の呪いにより荒れ果ててしまった「ナカツクニ」を救うために、オオカミ「アマテラス」が奔走するというもの。作品は日本神話や日本むかし話などが入り混じった世界観で、アマテラスやスサノオ、ツクヨミやヤマタノオロチなど、どこかで耳にしたことがある名前が使われている。その日本的世界観に一役買っているのが、筆書き風のグラフィックだ。ゲーム内のグラフィックはすべて筆タッチで描かれており、ゲームの立ち絵や背景というよりは、むしろ「絵巻物」だ。この演出によってプレイヤーは、日本の神話や昔話のような世界観を全面に打ち出した「和風ファンタジー」の世界に引き込まれてしまう。また筆で描いたようなグラフィックは、次で紹介するアクションにも深く関わってくる。

絶技哉! 『筆しらべ』を使った多彩なアクション

『大神』ならではの特徴は、何といっても「筆しらべ」アクションだろう。斬新ともいえるこのアクションは、名前の通り「筆を使って、神の奇跡を起こす」というものだ。まず筆者が感動したのは、枯れ木に花を咲かせるアクションである。主人公アマテラスは枯れてしまった神木に「筆しらべ」で花を咲かせるのだ。花が咲き、清水が湧き緑あふれる景色が広がる。まるで気分は「花咲じいさん」だ。他にも、夜を昼に変えたり、風を吹かせたりなど、様々な筆しらべがある。この筆しらべは、ギミック解除以外にも、戦闘上の要にもなる。特定の筆しらべによる攻撃が敵の弱点になったりするのだ。様々な「筆しらべ」を使って、パズル的要素のあるダンジョン攻略と戦闘を楽しんでほしい。

「幸」をあつめて心があたたまる! 幸玉あつめ

アマテラスは色々な人を助け、幸せな気持ちをあつめて強くなる。この幸せな気持ちを「幸玉」と呼ぶのだが、いいことをすると「幸玉」がもらえる。例えば神聖な場所に巣食っていた妖怪を退治したり、例えば神木に花を咲かせたり――と色々ある。その「幸玉」はアマテラスの強化に使うアイテムなのだが、「幸玉」あつめの方法が小粋なのだ。中でも筆者が大好きなのは、動物にエサをあげることと、枯れ木に花を咲かせることだ。「ナカツクニ」には様々な動物がおり、エサをあげることができる。それによって「幸玉」をもらうことができる。そのひとときが、心あたたまるというか、癒しの時間とでもいうか、……なぜか涙がこみあげてくるのだ。また呪いによって荒れ果てた大地には、枯れ木が散在している。その枯れ木には「筆しらべ」で花を咲かせることができる。ここでも「幸玉」をもらえる。そうやって少しずつ、大地が彩りを取り戻していく。そんな「幸」をもらって戦うアマテラス。太陽神の名を冠するに、ふさわしい主人公っぷりではないか(作中ではボケっとしているが)。

『太陽は昇る』――ラスボスは、自分の視界

ずいぶん昔のゲームなので言ってしまうが、筆者はラスボス戦の曲が目当てでプレイを始めた。だが待ってほしい。冒頭で言った通り「太陽は昇る」は名曲なのだ。そもそも『大神』のBGMは全体的に出来がいい。「心が躍り、耳に残る」ことがゲーム音楽の条件だとすると、『大神』のBGMは和のテイストを持たせつつ高いレベルで成立している。そして、その中でも最たるものが「太陽は昇る」だ。結論だけ言うとプレイヤーの涙腺は死ぬ。決戦前のイベントで涙がこみ上げ、イベント後に「太陽は昇る」がかかった時点で前が見えない。「これが…涙…? 泣いてるのはわたし…?」 だが、これだけ「負ける気がしないラスボス曲」があるだろうか。泣いている分だけ戦闘はやりづらいが、やり切った感が胸に残るのは約束しよう。そして何より、ラスボスに利く「筆しらべ」が、物語の締めとしては“最高”なのだ(実際にゲームをプレイして確かめてほしい)。そして確信する。「太陽は昇る」は名曲中の名曲だ、と。

 

ところで、寿司と天ぷらと味噌汁は和食の王道である。王道とは何か、それは大多数の人々が気軽に楽しめるものだ。そう考えるに『大神』は和風ファンタジーの王道だと筆者は考える。しかしながら王道的要素の他にも、独自性を発揮しているグラフィックやアクション、また珠玉のBGMというポテンシャルを『大神』は持っている。だから、もし二の足を踏んでいる方がいれば、今すぐクラウチングスタートを決めるべきだ。存在を知らなかったのならば、こういうゲームもあるんだと知ってほしいと強く願う。『大神』は、2021年にテレビ朝日が放送した“国民5万人がガチ投票!テレビゲーム総選挙”で、「29位」に選ばれているのだから。

 

 

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大神 絶景版

タイトル: 大神 絶景版
ジャンル: アドベンチャー
開発元: CAPCOM Co., Ltd.
パブリッシャー: CAPCOM Co., Ltd.
リリース日: 2017年12月13日